3/19は、月と地球が最接近する
スーパームーンというそうで。
月といえば、姫条さんの「月は静かに」ということで。
さらっと思いつくままに書いただけなので、
超短いSSSですが。
ややポエティックでごめんなさい。
以下からどうぞ。
注)冒頭の年齢設定は捏造なので、ホントは違うかもです。
「つきあかり」
朝のニュースで初めて知った、月の最接近。
19年振りの出来事らしい。
「オレが今24やから、19年前って言うたら……」
彼が5歳の頃。
彼が母親を失った頃。
身体が弱かった母親と一緒に幼稚園へ行くことは少なく、
入園式とその後数回以外は、家の使用人の送り迎えだった。
登園の際に、同じ学年の園児であろうか、
「おかあさんといっしょがいいの!」と泣いて
別れようとしない子どもを見て、
彼らのように泣いて甘えることすら出来ず、
いつも走って教室に駆け込んだ入園当時の春。
季節がめぐり、幼稚園を離れ小学校へ上がる春。
桜が舞い散る入学式に、彼の母親は来られなかった。
彼に付き添うのは、仕立てのいいスーツに身を包み
黒塗りの大きな高級車で送られてきた父親。
「まどか、お母さんはもうおらへんけど、
ちゃんとお前のことを見守ってくれてるからな」
入学式の後に他の保護者は教室まで一緒に入るのに
彼の父親は多忙を理由に、待っていた高級車で
仕事場へと戻っていった。
思えば、早くもその頃から父親との距離が
広がっていったのだろう。
家を飛び出し、ひとりだけの力で生きているつもりになり、
その間違いを諭されてからようやく父と向きあうようになり。
離れた距離も緩やかに埋められつつある。
今日の月は、彼女と一緒に見よう。
いつもより明るい月の光でも、
いつものように彼女を美しく照らすだろう。
いつもより大きく見える月の環を、
つないだ手と手、重ねた指と指に重ね、
ずっと離れないようにとおまじないをかけて。
これからも共にありたいから、
澄んだ月あかりの下で、静かに願おう。
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ジル
今回も、まどかの優しさ溢れるお話で、すっかり魅了されました!
ニィやんのことだから、こんな月夜はロマンチクルなこと、考えてそうですね
\(//∇//)\
2011/03/21(月) 16:07:39 | URL | [ 編集]