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2006'11.24.Fri

柊×歌SS(あの頃に戻れたらイイナ!ベース)

前回34話の、柊フォローSSと言ってもいいでしょう。
小暮×歌確定にも見えなかったし、
私は柊×歌を全力で応援し続けるさ。

一気に書くつもりが、中断中断してたのでUPが遅れましたが。
ギャグになるので大仏の直接描写はナシの方向で!



『すれ違いのプレゼント』


 6:00AM 起床。
 同じ屋敷に住む弟とは違い、休日であっても彼は学校へ行くのと同じ時間に目覚める。
 顔を合わせれば妙な突っ掛かりばかりをしてくる弟がいない―― それだけで、兄である彼に以前のような静寂と穏やかさをもたらすものとなる。
 平日の朝は食堂で不愉快な思いをする事も多いが、今日はそんな雑音に心を苛立たせることもない。

 穏やかな一日の始まりはまだほの暗い時間。
 広い彼の寝室の大きな窓から見える明けの空に、雲は一筋も浮かんでいない。
(晴れたか……)
「朝から曇るでしょう」と言っていた、愛想のいいお天気キャスターの天気予報は外れ、淡い藤色のグラデーションが空に広がっていた。
 窓を少し開けて部屋に飛び込んできた朝の空気。
 寝起きの気だるさが引いて、予想以上に冷たさに思わず眉をひそめる。
「今日、だったな」
 確認をするように一人つぶやくと、漏れた息が白く揺らめいた。



「潤様、起きてくださいませ。潤様」
 同じ頃。一方の弟君は、いつもの調子で昼まで寝続ける勢いであったが、彼の忠臣である執事がゆさゆさと体を揺さぶって起こしにかかっている。
「んー、歌ちゃんアイラビュ~……」
 白い羽根枕を抱きしめながら、広いベッドの端の方で丸まってまだまだ夢の中にいる様子。
「潤様っ! 今日は歌様のお誕生日会に行かるのでございましょう。
 プレゼントとお召し物の最終チェックをなさいませんと」
「うぅ……ん、もう、ちょっと……」
「やはりこの調子ですと、お目覚めまであと2時間くらいでしょうな」
 彼にとっての休日8:00起床は早起きさせるにはこれくらいから声を掛けなければならないようだった。




 7:30AM 朝食。
 朝の入浴後に続く穏やかな時間。
 新鮮な食材と飲み物が、暖まって目覚めた体にしみわたる。

「あー、バクのサンマが~!!」
「んん~ん、やっぱ秋の味覚はサイコーだねぇ」
「クロミ様、ひどいゾナ……。でも綺麗に食べているのは偉いゾナ」
「んあ? バクなんかに感心される覚えはないよ!」
 ぬいぐるみとナスビのコンビが相変わらずのやりとりを繰り広げているのを横目に、淡々と食事を進める。

 慣れてしまったいつもどおりの騒がしさではあるが、いつもと違って広い食堂の広いテーブルの対面は空席。
 なおさら穏やかな朝。
 ちらりと視線をその空席に向けたのに、彼の執事は気づいて口を開く。
「今日はお休みの日ですから、まだお起きではないようですね。
 潤様も恵一坊ちゃまのように規則正しい生活を送っていただくようにと、またセバスタンに注意しておかねばなりません」
「どうせなら、いつも僕と時間が合わないようにしてもらいたいのだが」
「いいえ、それはなりません。潤様には坊ちゃまを見習ってお行儀良くなって頂かなければなりませんから」
「……ふぅ」

「でもさぁ、今日は潤君お出かけって言ってたよね。どこ行くんだったっけ?」
「バクは知ってるゾナよ。クロミ様、そんなことも知らないゾナか」
「だってぇ、聞いても教えてくんなかったしぃ……。って、なんでバクだけ知ってんだよ!」
「バクの情報網を舐めてもらっちゃあ困るゾナ。ふっふっふ~ん……あででっ!!」
「もったいぶらずにとっとと言えってんだよ! 全くもう、バクのくせに」
「わ、綿が出るところだったゾナよ。今日は歌ちゃんの誕生パーティーに行くみたいゾナ」

 弟と同じクラスの彼女の名前が出たことに、彼は少し反応をする。
 友人として仲良くしているようだから、パーティーに招かれているのは当たり前だろう。
 そう言えばここ数日いつも以上にギターの練習をしていたし、ステージの準備をしていたようだったから、おそらくそれをプレゼントするのだろう。
「雑音など贈っても迷惑だろうに」

「ほわ? 柊様なんか言いました?」
「いや、別に。……ごちそうさま」




 8:00AM バラ園にて。
 屋敷の敷地内にあるバラ園は、執事のセバスチャンが手塩に掛けて育てている。
 その中でちょうど摘みごろとなって咲いている赤いバラを手折る彼。
 その姿を見て妄想を膨らませる黒頭巾のぬいぐるみは、いつものことなので置いておくとして。

「これだけあれば十分だろうか?」
「ええ、大きな花束になりますよ。歌様もきっとお喜びになられるかと」
「そう……、ならいいんだが。アレとどちらがいいだろう?」
「両方差し上げればよろしいと思いますが。恵一坊ちゃまが選ばれたプレゼントですから、あちらもさぞやお喜びになることでしょう」
「そう、か?」
 やや険しい表情を浮かべるのは、もう一方のプレゼントを本当に気に入ってくれるのか、確信が持てないから。
 以前に彼女にもらった土産に合わせたものを作らせはしたものの、個人的にはいまひとつ彼女の美的センスが理解出来ないところはある。
 しかも、少しばかりサイズを大きくしすぎたかもしれない。

「しかし恵一坊ちゃま。パーティーには行かれなくてよろしいのですか?」
「いいんだ。僕が行くよりも、彼女は皆に祝ってもらう方が嬉しいだろうしね」

 去年の同じ日。
 彼とデートしていた時よりも、家族と友人達が戻ってきてパーティーを再開した時の方が、何倍もいい笑顔をしていた。
 自分の前で見せる表情とはまた違う。
 そうして彼女から幸せな明るい笑みを引き出させたあの場所は、自分にとってとても居心地が悪いものだった。
 だから最後まで祝うことをせず、そのまま去ることを選んだ。

 今年も結局同じことになるだろう。
 それなら、自分の出る幕ではない。
 どうせその場には弟もいる。
 自分がいれば、何かと張り合い、突っ掛かりを見せるあの弟が彼女たちに迷惑をかけないはずがない。
(全く、あいつの子供っぽさはいつになったら直るんだ)
 そんな憂いを抱きながら、彼は執事に全てを託したのだった。




 自らの思い込みによる誤解を、彼はまだ気づいていない。
 彼からの直接の祝いの言葉は、彼女にとってまだ大きな喜びとなるはずなのに。
 彼にとっては「妹」に過ぎないんだと何度自分に言い聞かせても、まだ諦めきれていないのも事実。
 紅いバラの花束も、直接手渡されればどれだけ嬉しかっただろう。

―― 妹へ、誕生日おめでとう

 大きな花束に添えられた、残酷な短いメッセージ。
 
 彼女にとって、彼から告げられる「妹」との言葉は残酷なもの。
 けれど、彼は親愛の情を込めて告げているつもりでいる。
 彼はまだ気づいていない。
 もしも彼に本当の妹がいたなら、その違いも分かっていたのだろうが。


 すれ違う想いがふたつ。
 ただ、彼はそれがすれ違って行きつつあることに、まだ気づいていない。
 いつまでも大切な「妹」だとしたら、その「妹」が自分から離れていった時に、ようやく気づくのかもしれない。
 安穏として見ていられなくなり、取り乱すほどになるならば……。
 それはもう「兄」の範疇ではないと誰かに指摘されるまで、彼は気づかないのだろうか。
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